川甚 ~ 閉業前に出会った笑顔

昨日、寅さんで有名な東京葛飾区柴又にある日本料理店の「川甚」さんに訪問しました。

コロナ禍の影響で1790年創業の川甚さんも2021年1月31日に閉業することになったので、「是非、最後に訪問しておきたい」と思ったんです。

わたしと同じことを考えた人は多いようで、開店時間ぴったりの11時に到着したところ、39組目の受付になりました。その日のランチの受付は「40組目まで」ということで、本当にぎりぎりランチにありつけることにほっと胸をなでおろしたのですが、結局、ランチにありつけたのは、15時ですから、4時間も待機していたことになります。

自分の名前が呼ばれるまでの間、「寅さん記念館」や「柴又帝釈天参道商店街」を観光することにしたのですが、それでも時間があまったので、ずっと読書して時間を潰しながらこんなことを考えていました↓↓↓

テレビ取材にて

川甚のオーナーは、テレビの取材にこんなことをいってました。

「コロナには恨みがない。自分の実力不足である。」、「コロナ禍のような状況が2年、3年と続いても、持ちこたえるだけの体力をつけておかなければならなかったのに、その準備を怠ったのは自分の責任である」と。

一昔前、勝間和代さんは、「社会人になったら、6カ月働かなくても食べていけるくらいの貯金が必要。貯金がないといざ転職するというときに焦って判断を間違いやすくなるから。」なんてことをいっていたと記憶しています。

また松下幸之助は、「経営資源の8割稼働でも利益がでるようにするべき。フル稼働でなければ利益がでないなら、なにかあったときにすぐにダメになる」(ダム経営)というようなことをいっていましたが、、、

さすがに今回のように、「お客さんがほとんどこない」という状況に耐えることのできるのは、もともとお客さんが少ない小規模な飲食店で、1日6万円の協力金もあれば十分耐えられる。。。。というような場合のみでしょう。

川甚のように大きな箱をもっていて、店舗の近くにある敷地には従業員の寮まで用意しているような大きな飲食店にとっては、1日6万円の協力金ではとてもじゃないですがやっていけないでしょう。

二度と元には戻らないもの

日本人のおおくは、環境問題にしても、「森林を伐採したら、植林をすればいい。」というように考えがちです。しかし現実には、一度破壊されてしまった生態系は、二度と元には戻らないのです。

なぜならば、森林を伐採したら、そこに住み着いていた微生物や昆虫が死滅するからです。生態系を支えているのは、目に見える植物だけでなく、目には見えない微生物のような存在も重要な役割を果たしていることを忘れてはいけません。

景気対策にしても、「コロナが落ち着いたら元に戻るだろう。」という風にどこか楽観的に考えているフシがあります。しかし現実には、一度コロナで経営していた飲食店をダメにしてしまった人は「もう二度と飲食には関わりたくない」と考えるかもしれないのです。

バブルが崩壊した時、投資で大損した人のなかには、「もう二度と株はやらない」と固く心に誓って投資家であることをやめた人もいました。同様に、配偶者に浮気をされた結果、「もう二度と信用できない」とうことで配偶者であることをやめる人もいるでしょう。

まぁ、そういうことなんです。もっとわかりやすい事例をだしましょうか。

田舎に大型スーパーがやってきた結果、地元の商店街がシャッター街になりました。「地元の商店街が滅びても、大型スーパーがあれば問題はない。」と楽観的に考えていた人たちもいたでしょう。しかし昨今、大型スーパーが撤退することも珍しくありません。

大型スーパーが撤退すれば、地元の商店街が復活するのでしょうか?答えはもちろん「ノー」です。

「一度壊れたものは二度とも戻らない。戻ることがあったとしても、それには長い時間がかかる・・・」ということを、もっとわたしたちは自覚すべきなのではないでしょうか。

P.S. 自然な笑顔

川甚さんの料理でもっとも楽しみにしていたのは「鯉あらい」(鯉のお刺身)でしたが、もっとも印象に残ったのはひとりの店員さんの笑顔でした。

これまでの人生の中でたくさんのサービスを受けてきましたが、そのほとんどは「仕事用の笑顔」であるとなんとなく感じるような性質をもっていました。

嫌みもいやらしさもなく、うやうやしくもない、、、、そんな自然な笑顔に出会えるのはいつになるのでしょうか。それでは今日もよい一日を!!