超現役論~唯一の解決策は、自立して働き続けることだ。by 野口悠紀雄

2019年に老後資金2000万円問題が話題になったわけですが、残念ながら「年金の問題」が真正面から議論されることはありません。

日本という国全体として老後資金の問題を解決するための方向性は2つ考えられます。1つ目の解決策は、年金だけで老後生活ができるように財源措置を講じる。2つ目の選択肢は、働く意欲があれば誰でも定年するまでに2,000万円貯められるようにする

残念ながらいずれの選択肢も非現実的です。なぜならば財政措置を講じる(税負担を重くする)のは政治的な決断としてハードルが高すぎるし、経済成長が止まった日本において1997年をピークに減少傾向が続いている実質賃金を上昇させるなんてことも夢物語だからです。

となると年金制度を破綻させないためのもっとも現実的な解決策として挙げられるのは、「年金の支給開始年齢の引き上げ」になるわけですが、あなたはそのための準備ができているでしょうか?

もちろん現在給料が高く、安定した職業についており、老後資金について心配する必要がないという方は、ここから先をチェックする必要はないのですが、老後資金について漠然とした不安を抱えている現役世代の方は、是非ともチェックしてみてください。

なぜ準備しないのか?

「年金だけは生活が苦しい」と嘆いている65歳以上の高齢者は、すでにたくさんいます。しかしそれにもかかわらず、本気でそのための準備をしないのはなぜなのでしょうか?

おそらく「なんとかなるだろう」と心のどこかで考えてしまっているからです。しかし野口悠紀雄先生の「超」現役論を読むと、その幻想は木っ端みじんに打ち砕かれるでしょう。

野口悠紀雄先生によれば、今後年金財政の悪化は避けられないし、このままの状況が続けば2040年代には年金の積立金は枯渇することが想定されるのだそうです。

もちろん年金制度の破綻を回避するための方策はいくつかあります。例えば「保険料率引き上げ」、「マクロスライド強化」(年金額を自動的に0.9%ほど削減する仕組み)、「支給開始年齢引き上げ」などが考えられます。

では年金制度破綻のために、どの選択肢が採用されるでしょうか?結論からいうと「支給開始年齢引き上げ」が、もっとも政治的にも決断しやすい選択肢になります。しかし支給開始年齢を引き上げた場合には、「高齢者の就業」が条件になります。

例えば年金の支給開始年齢が65歳から70歳に引き上げられた場合には、年金が支払われない65歳から70歳までの期間は働いてお金を稼がなくてはいけなくなるといった状況が生まれてしまいます。

このような話を聞くのはツライでしょうし、聞きたくもないことでしょう。しかし年金の実情について理解すればするほど、今の日本は表面的にみれば安定しているように見えて、その内実はどうしようもないほど行き詰っているのです。唯一、明るい話があるとすれば・・・・

下剋上の時代

安定した社会が壊れる時は、意欲のある人間にとっては、チャンスの時になります。日本の場合、明治維新で社会体制が壊れ、第二次世界大戦に敗れたときも、それまでの社会秩序が壊れて、意欲のある人間が新しい事業を興すことが可能になりました。

第二次世界大戦に敗れた時の日本は焼け野原でしたし、衣食住にも困るありさまで、そのなかで何とかしなければいけない状況だったわけですが、今の日本はそこまで壊れているわけではありません。

そもそも日本全体が沈んでいるからといって、あなたも一緒に沈まなければいけないということはありません。沈みゆく日本でもお金を稼ぐ人は、ちゃんとお金を稼ぐものです。

もしかしたらあなたは「で・・・・どうすればいいのですか?」という質問をしたくてウズウズしているかもしれませんので、最後に野口悠紀雄先生の言葉を捧げます。

将来の道筋を教えてくれる学校はありませんし、先生もいません。ですから、道を拓くには、手探りで進むしかありません。海図は一人一人がつくるのです。(中略)

金融緩和を続ければ経済が好転するとの夢想を続けるのは、いい加減、やめにしましょう。働き方改革、国家戦略特区、経済特区などといったものに頼るのは、やめましょう。産業革新投資機構に頼るのも、やめましょう。こうしたものとは訣別しましょう。それによってこそ、未来が開けるでしょう。

【出典:「超」現役論